リフォーム 世田谷区の限界

J氏はA氏の豪胆さを気に入った。 ふたりは8月に結婚する予定になっていたが、同じ月に、やはりビースティ・ボーイのR氏も、K氏とともに教会の通路を歩くことになっていた。
「あいつを祭壇でのしてやる」A氏がこの夏に語ったことばだ。 A氏とE氏が友情をはぐくむいっぽうで、R氏はだんだん彼らと疎遠になっていた。
たとえば、A氏もE氏も、R氏の結婚式に出席するつもりはなかった。 A氏とE氏は、こんなふうになった原因のひとつは、I氏ーがR社の自己啓発セミナーにかかわったことにあると考えていた。
ふたりには、そのセミナーのことも、R氏が自分たちを招待した理由も、まるで理解できなかった。 おまけに、A氏はK氏とそりが合わなかったので、招待客のリストからずっとまえに消されていた。
あれが話のきっかけになると思ったのね、とJ氏は回想する。 わたしは不愉快になった。
E氏・E氏は、だれかに最終的なクロームの「ホワイトペーパー」を書いてもらわなければならなかった。 これは業界用語で、あるテクノロジーの概要とその重要性を説明する、紙またはオンラインの資料だ。
E氏は、自宅の居間で人選をはじめた。 彼の考えでは、この仕事に最適の人物は、親友のA氏だった。
クロームの正式なお披露目パーティがおこなわれるのは、シグラフーという、7月19日から24日まで開催される、コンピュータグラフィックスおよびインタラクティブ技術の国際見本市でのことだった。 このイベントも、会場はオーランドにある巨大なオレンジ郡コンベンションセンターだった。
ステージにあがり、顔の見えない人の海に向かってクロームの説明をするのは、E氏ではなかった。 今回は、彼は展示フロアにとどまり、ソフトウェア・デベロッパーや、マスコミや、協力関係をつくれそうな会社の代表と、面と向かって話をするつもりだった。
クロームのシールや関連テクノロジーを開発した、一ダースを超える独立系ソフトウェアメーカーが、この見本市に出席する。 A氏がM社を解雇されてから1年以上たっていた。
そしていま、彼は帝国の強力な軌道のなかにふたたびはいりこんでいた。 なんとも皮肉な成り行きだ。

このときのホワイトペーパーの報酬は、A氏が1年まえにクロームを救おうとして墜落し、燃え尽きてから、マイクロソフトが彼に書いた最初の小切手だった。 A氏は真剣に仕事をした。
なにしろ2万ドルがかかっていた。 だが、同時に、この機会をすこし楽しんでもいた。


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